事業の概況

当社は在宅訪問薬局事業、きらりプライム事業、プライマリケアホーム事業を主たる事業としており、それぞれの事業が地域医療機関・介護事業者と連携することでシナジー(相乗効果)を生み出す事業モデルを構築しています。

 

当社の在宅訪問薬局事業は医療機関及び介護事業者との連携が不可欠ですが、在宅患者に対してケアプランを提供するケアプランサービス、医療依存度が高く重度介護者が最期まで生活できる介護施設を運営するプライマリケアホーム事業というように、一人の在宅患者に対して複数のサービス及び商品を提供できる事業構成であります。

 

また、きらりプライム加盟先店舗は、在宅訪問薬局の運営ノウハウを享受するとともに、当社を含む地域包括ケアシステムと繋がり、加盟店先が展開する地域でそれぞれの地域包括ケアシステムを形成することでより大きなネットワークとなり、全国の在宅患者をサポートできると考えております。今後、地域包括ケアの確立のため、在宅患者へのサービスだけでなく、医療、介護領域の事業者が抱える課題に向けて、IOT・ICTを利用したソリューションサービスや高齢者向け介護施設運営ノウハウを提供し、幅広いプライマリーケアのプラットフォーム企業を目指しております。

事業の環境

当社の経営環境としては、国内の高齢化が進む中社会保障の財源に問題を抱えており、政府は医療及び介護の現場を病院から在宅へシフトしていく方針を積極的に進めていることから、中長期的に市場が拡大していくものと考えております。

業績の推移

医療・介護事業者等を地域内で繋ぎ、在宅患者を中心として連携されたネットワークの中で、安心して住み慣れた環境で過ごすことができる体制を、プライマリーケアのプラットフォーム企業として定義し、患者様・利用者様のニーズに応えながら、社会的課題の解決に貢献してまいります。

 

 このような考えのもと、在宅患者へお薬をお届けする在宅訪問薬局事業だけではなく、在宅患者をサポートしようとする中小薬局事業者への支援としてきらりプライム事業を拡大し、1社だけではできないより多くの在宅患者に直接、間接を問わず包括的なケアができる体制を構築していきます。この結果、当社は売上高、利益共に大きく拡大することができており、今後さらなる成長を目指してまいります。

きらりプライム事業

きらりプライム事業は、当社の理念である「患者さん(利用者さん)が24時間365日自宅で『安心』して療養できる社会インフラを創る」を実現するため自社の店舗展開だけでなく広く運営ノウハウを提供し、増加する在宅患者に対応するため2019年2月より開始しました。主な事業内容は中小薬局事業者に対して在宅訪問薬局運営ノウハウの提供(定期セミナーの開催)、自社開発の在宅訪問支援情報システム「ファムケア」の貸与、人材・営業(個人患者、介護施設の開拓)の支援及び実地による教育を行うものです。

当事業の特徴は、当社が創業から培ったノウハウを外部サービスとし、在宅訪問を行っている、又は行おうとする事業者の困りごとへのソリューションを提供します。特に当社が2017年6月に自社開発した在宅訪問支援情報システム「ファムケア」は、在宅訪問業務特有の報告書作成機能やお薬の配達先でも患者様の薬歴等を確認でき、在宅訪問業務に関わるコスト増加を抑制することができます。長年の在宅訪問業務の経験から薬剤師が直接関わって開発したシステムは、当社ならではの細かなユーザビリティを実現しており、当事業のサービスの大きな特徴と言えます。

 

さらに、加盟店を集めることで、急増する在宅患者に対応するだけでなく、中小薬局事業者の薬価改定や病院から在宅への国の施策変更(厚生労働省地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会)への対応などの経営課題に共に取り組みます。

 

この在宅訪問支援情報システムや医薬品購入交渉代行サービスは、きらりプライム加盟先の在宅患者の処方箋枚数や、仕入れた医薬品の金額に応じて利用料が変動するサブスクリプション型リカーリングレベニューモデル(注)となっており、加盟店舗の増加と当社の支援による在宅患者増加が事業拡大のカギとなります。

(注) 

毎月サービスをサブスクリプション(定期的)で利用した量に応じて課金するリカーリングレベニュー(継続収益)型のビジネスモデル

在宅訪問薬局事業

当社は、「きらり薬局」の屋号のもと在宅訪問薬局事業を営んでいます。


在宅訪問薬局事業の特徴として、厚生労働省から提示された、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるというコンセプトである「地域包括ケアシステム」の拡大及び在宅医療の推進に着目し、老人ホーム型介護施設の出店地域において「在宅訪問型」の出店に注力しており、特に特定施設(注1)、住宅型老人ホーム(注2)、サービス付き高齢者住宅(注3)及びグループホーム(注4)との連携を重視した店舗展開を推進しております。そのため、当社の顧客は高齢者施設入居者で要介護認定を受けた方が大半を占めます。

 

従来の門前薬局のように外来調剤収入を主体とせず、在宅訪問収入を主体に1店舗当たり平均200人以上の在宅患者に居宅療養管理指導を行い、通院困難な在宅療養患者に対して緊急時には24時間体制で薬剤師が訪問するサービスを行います。また、2018年7月には全国初となる保険診療内でのオンライン服薬指導を国家戦略特区(福岡市)で実施しました。これは、いままで在宅訪問服薬指導を受けることができなかった地域の患者様にも、24時間365日在宅訪問薬局のサービスを提供できるようになる先端的な取り組みであります。

(注1) 特定施設…

厚生労働省が定める入居定員が30名以上の介護施設

(注2) 住宅型老人ホーム…

要介護者や、自立(介護認定なし)・要支援状態の高齢者を受け入れている施設

(注3) サービス付き高齢者住宅…

高齢者住まい法の基準により登録される介護・医療と連携し、高齢者の安心を支えるサービスを提供する、バリアフリー構造の住宅

(注4) グループホーム…

病気や障害などで生活に困難を抱えた人達が、専門スタッフ等の援助を受けながら、小人数、一般の住宅で生活する社会的介護の形態のこと

プライマリケアホーム事業

プライマリケアホーム事業は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを行う住宅型有料老人ホームを開設し運営しております。

プライマリケアホーム事業の特徴は有料老人ホームの平均定員数が41名程度であるところ、定員100名以上と大型化しており、在宅訪問薬局事業で培った在宅医療ノウハウとネットワークを生かし、要介護度が高く(平均要介護度3.5程度)、医療依存度が高い(ガン末期、パーキンソン病、気管切開等)在宅患者に対応できる施設であります。さらに、介護人材不足の解消、運営効率を上げ収益性を高めるため、自社開発したICT機器を取り入れております。プライマリケアホーム事業にはケアプランサービス、福祉用具貸与サービスを含んでおり、在宅患者である入居者に対して、複合的に生活のサポートを行っております。

プライマリケアホームでの入居者の様子
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プライマリケアホームでの入居者の様子

ケアプランサービス

ケアプランサービスと当社の持つ「在宅訪問」「在宅重視型開業医とのネットワーク」を連携することにより、情報共有を密に行い、より利用者のニーズに沿った医療介護サービスを提供しております。

 

当社のケアプランサービスを受ける方の約8割は当社の在宅訪問薬局サービスを受けていただいております。ケアプラン作成を通じ、介護事業者とのネットワークを強化することができるため、間接的に在宅訪問薬局事業へのシナジー(相乗効果)が生まれます。

介護計画
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介護計画

新たな取り組み

2018年7月には全国初となる保険診療内でのオンライン服薬指導を国家戦略特区(福岡市)で実施しました。


これは、いままで在宅訪問服薬指導を受けることができなかった地域の患者様にも、24時間365日在宅訪問薬局のサービスを提供できるようになる先端的な取り組みです。

当社が属する医療介護業界は一般的に労働集約型産業であり、高齢化が進む社会で労働人口が縮小する中でより効率的な運営が求められます。


そこで当社は介護事業者との関わりの中で得られた人材不足に起因する事業運営上の課題を解決するため、DX(注)の取り組みの一環として「Primary Care Robot」(介護施設向けウェアラブル機器等)を開発し、実際の介護施設で導入試験をしております。当社の新たな事業として当社のネットワークを活かし2021年9月よりテスト販売を開始しました。

(注) 

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

成長戦略

要介護者の増加に伴い慢性的に人材が不足するなどの新たな社会課題に対して、当社の医療、介護事業者とのネットワーク及び中小調剤薬局のネットワークを活かした新たなサービスを展開する機会が生まれております。

 

このような経営環境の中、当社は、在宅訪問薬局事業において当社、在宅医療及び介護の現場運営の効率化を図るためのIT並びにICT分野の開発や、当社人材によるコンサルティングを展開し、在宅患者が安心して療養できる住まいを運営するプライマリケアホーム事業ともあわせ、きらりプライム加盟先を含めた各事業のシナジー(相乗効果)を更に高めていく方針であります。今後も既存の調剤薬局の枠を超えたプライマリーケアを追求してまいります。