2018年は、「人の想いをつなぐ」ことの大切さを改めて感じる出来事がありました。まず、横浜市の箕輪町店オープン。ここは、個人オーナーが30年以上にわたって経営してきた薬局でしたが、オーナーの急死によって当社が買い取ることになった物件です。前オーナー急死のため、店内は全く整理されていない状態で、カウンターの奥には漢方の生薬擦り合わせに用いる「薬研(やげん)」がそのままの状態で置かれていました。

 

処方せん枚数は30枚程度でしたから、経営的には細々とやっておられたのでしょうが、それで30年以上続いていたのですから、患者さんたちに親しまれ信頼されていたであろうことが想像できます。そんな店を当社が引き継ぎ、それまでやっていなかった在宅患者さんへの薬の配薬・訪問を始めることで、今、着々と事業の立て直しを図っています。

 

前オーナーの患者さんに対する想いを引き継ぎながら、それを新しいステージへと進化させているのですから、きっと故人も喜んでくれているだろうと思います。また、創業から10年間の経験の積み重ねから、新規出店の際はドクターの仕事の進め方を事前確認するという、出店及び地域戦略のルールが確立できました。

 

創業以来、最大のトピックである『日本初の遠隔服薬指導スタート』も、人の想いをつなぐことで実現できた快挙だと言えます。2014年のストーリーで紹介していますが、遠隔服薬指導を担当することになった名島店は、もともと某老人ホームのために出店したものが、その施設の一方的な方針転換で、全くのムダとなった店舗。当然ながら、当初は閉鎖を検討していました。また、遠隔服薬指導の対象となったのは、名島店から片道1時間ほどかかり、夏場や行楽シーズンには大渋滞する志賀島在住の患者さんで、こちらも採算が合わないことから訪問をお断りする方向で検討していました。

 

しかし、在宅医療に力を入れておられるドクターが名島で活動しておられること、当時名島店の薬局長をしていた原マネージャーと医療介護連携部の井本部長が、「遠距離ですが工夫の余地もあるのでやりましょう!」と、熱心に想いを告げていたことで、そのまま業務を続行していた案件でした。そんな中、志賀島が福岡市の医療戦略特区に選定され、特区における遠隔診療に続き、遠隔服薬指導も可能になったことで、日本初の遠隔服薬指導が現実のものになったのです。 古代中国の著名な儒教学者・孟子が、『天時不如地利、地利不如人和』という言葉を遺しています。現代語に訳すと、「天のもたらす幸運は地勢の有利さには及ばない。地勢の有利さは人心の一致には及ばない」という意味です。福岡市の特区政策という「天時」だけでも、名島店があるという「地利」だけでも、遠隔服薬指導は実現しませんでした。人の想いである「人和」が根幹にあり、それに「天時」「地利」が奇跡的に重なったことで、「日本初」を成し遂げることができたのです。

 

今宿店をOPENしたのもこの年です。この店舗はきらり薬局を応援してくれる方からの紹介でした。全ては「人」だということを、強く感じさせる1年でした。