上場に向けた夢が現実味を帯びてきたことで、私も真剣に、上場について勉強するようになりました。同時に、「10年後にこうなったら楽しいな」というイメージも次々と沸いてきました。まず浮かんできたのは、私たちのサービスが日本全体に広まり、これから海外にも出店するかどうかを社内で議論している姿。

 

実は「海外出店」の夢は、私が開業した8年前、一風堂の河原成美社長から送っていただいた「文章」が発端。その当時の一風堂さんは、New Yorkのブロードウェイ近くに「IPPUDO」を出店した時期で、頂いた文章の中にも、博多の小さなラーメン屋が、気付いたらNew Yorkに出店し、ブロードウェイで修行中の見習い役者がアルバイトで博多ラーメンを作り、ブロードウェイ帰りの客がそれを食べている光景を眺め、河原社長が興奮している様子が書かれていました。

 

さらに、シンガポールなど当時の新興国の力強いエネルギーを肌で感じる様子も書かれており、文章の最後には、何の実績もない(その当時は)私たち20代の若造に「小さくまとまるなよ!」と言った趣旨のメッセージが書かれていました。それを読み、とても興奮したのを覚えています。

 

いつか私たち「きらり薬局」のサービスが世界の人たちに届いて、「Kirari is pretty good!!」と外国人が言っているのを見てみたい。薬の専門家、介護の専門家が本当の意味で身近にいるということが助かるのは、日本人も外国人も基本的に一緒だと思っています。もちろん、現状をおろそかにするつもりはありませんし、薬局内の体制も整えていかねばなりません。ただ、私の経験上、『伸ばそう』という気概が会社にないと質が向上しませんし、現状維持は衰退です。

 

会社上層部が夢を掲げて組織を牽引するというのは、企業にとって大事なことだと言えます。質も規模も今より高め、「日本のきらり薬局」のサービスを人種、思想、宗教の壁を越えて世界に通用させたい。それが、「こうなったら楽しいな」いや、「必ずこうする」という10年後の夢です。

 

いずれにせよ、上場に向けての準備は着実に進み始めました。株売買の窓口となる証券会社も決まり、監査法人はトーマツ、VCは三井住友系のSMBCと、福岡市場に強い(株)DOGAN、宮崎太陽キャピタルからの投資を受けることに決定。なお、上記のVC3社に加え、医療系ITメガベンチャー「エムスリー」からの投資も受けることになりました。

 

エムスリーは、『インターネットを活用して健康で楽しく長生きする人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと』を企業理念に掲げ、MR業務のIT化を推進している会社です。治験の受託やCRO業務にも力を入れており、年間売り上げ900億円前後、270億円ほどの利益を出しています。それほどの規模の会社から投資話を持ちかけられたのですから、当初は「買収されるのではないか?」という不安を感じて先方の担当者とじっくり話をしました。世界に誇れる日本企業からの投資を受けるようになったことで、上場に向けた準備に弾みがついたと言えるでしょう。HYUGA PRIMARY CAREが訪問する患者さんや家族に一株だけでも買っていただき、このサービスを一緒に作っていきたいと強く願っています。